退去費用の相場|間取り・居住年数別の目安と高すぎる請求を防ぐ確認手順

退去費用の相場は、ワンルーム・1Kで2万〜3.5万円、1LDKで3万〜5万円が目安です(各社公表・2026年7月時点)。ただし経年劣化と通常損耗は貸主負担が原則で、居住年数が長いほど借主の負担は下がります。

この記事でわかること

  • 退去費用の相場は間取りと居住年数、そして「借主の過失があるか」で決まる
  • 国交省ガイドラインでは経年劣化・通常損耗は貸主負担、故意・過失は借主負担が原則
  • 壁紙などは耐用年数の経過で借主負担が減る(クロスは6年で残存1円)
  • 敷金なし・タバコ・ペットはケースごとに請求額と考え方が変わる
  • 高すぎると感じたら内訳明細の確認→ガイドライン照合→相談先の順で動く

公的情報源: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(参照)/消費者庁 消費者ホットライン「188」(参照

目次

退去費用の相場はいくら?間取り・居住年数別の目安

先に結論です。退去費用の相場は、ワンルーム・1Kで2万〜3.5万円、1LDKで3万〜5万円が目安です(各社公表・2026年7月時点)。

ここでいう退去費用とは、賃貸を明け渡すときに借主が負担する「原状回復費用」と「ハウスクリーニング費用」の合計を指します。

ただし、この相場はあくまで「借主に大きな過失がない、通常の使い方」の場合です。タバコのヤニやペットの傷など、故意・過失による毀損があれば金額は上がります。

敷金精算の現場では、「相場より高い=ぼったくり」と早合点する相談も多くありました。実際は、過失の有無と居住年数を無視して相場だけで比べていることが原因のケースが目立ちます。

間取り・居住年数別の退去費用の目安(通常使用・各社公表相場をもとに整理・2026年7月時点)

間取り入居〜3年5年前後10年以上
ワンルーム・1K2万〜3.5万円2万〜4万円2万〜4万円(ほぼクリーニング代)
1DK・1LDK3万〜5万円3万〜6万円3万〜6万円(ほぼクリーニング代)
2DK・2LDK5万〜9万円5万〜10万円4万〜8万円(ほぼクリーニング代)

上の表で注目したいのは、10年以上住むと負担が「ハウスクリーニング代」に近づく点です。壁紙などの価値が時間とともに下がり、借主の負担割合が小さくなるためです。

数字はあくまで通常使用の目安で、実際の請求は物件・契約・過失の有無で変わります。入居時にかかったお金の全体像は、一人暮らしの初期費用の平均と内訳で整理しています。

退去費用は誰が払う?国交省ガイドラインの貸主・借主の負担区分

退去費用の負担区分は、経年劣化と通常損耗は貸主負担、故意・過失による損耗は借主負担が原則で、迷う項目は入居時の記録と照合して切り分ける。
図:退去費用は経年劣化・通常損耗=貸主、故意・過失=借主が原則(国交省ガイドライン・2026年7月時点)

先に結論です。退去費用の負担は、経年劣化・通常損耗は貸主、故意・過失による損耗は借主という国交省ガイドラインの原則で判断します。

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を「借主が入居時の状態に戻すこと」ではないと定義しています。普通に住んでいれば生じる劣化まで借主が負担するものではない、という考え方です(参照:国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン)。

貸主負担・借主負担の分かれ方

  • 経年劣化(貸主負担):日光による壁紙・畳の変色、設備の自然な老朽化など、時間の経過で生じる劣化
  • 通常損耗(貸主負担):家具の設置跡、テレビ裏の電気ヤケなど、普通に生活して生じる損耗
  • 故意・過失(借主負担):タバコのヤニ・臭い、飲み物のこぼしジミ、引越し作業の傷、掃除不足によるカビなど

ポイントは、「通常の使い方かどうか」の一線です。うっかりつけた大きな傷や、手入れを怠って広がった汚れは、借主負担と判断されやすくなります。

負担区分の判定の流れ

  • その損耗は時間の経過や普通の生活で生じたか→ はい なら貸主負担の方向
  • 自分の不注意・手入れ不足・用法違反で生じたか→ はい なら借主負担の方向
  • 迷う項目は入居時の写真・チェックシートと照合して切り分ける

契約書に「借主負担」と書いてあっても、ガイドラインの原則を超える負担は特約の有効性が争点になります。特約については後の章で扱います。法的な争いに発展しそうな場合は、消費生活センターや弁護士など有資格の専門家に相談してください。

居住年数で退去費用は下がる|経年劣化の減価と耐用年数

退去費用は居住年数が長いほど借主負担が下がり、壁紙は6年で残存1円まで減価するが、故意・過失による張替えの施工費は年数が経っても借主負担として残ることがある。
図:居住年数が長いほど壁紙などの借主負担は下がる。ただし過失による施工費は年数が経っても残ることがある(2026年7月時点)

先に結論です。壁紙などの内装は耐用年数が決まっており、住んだ年数が長いほど借主の負担割合が下がります

国交省ガイドラインでは、壁紙(クロス)などの負担額を「経過年数」で減らす考え方を採用しています。借主負担額 = 原状回復費用 ×(法定耐用年数-入居年数)/法定耐用年数という計算です。

代表的な壁紙(クロス)の耐用年数は6年とされ、6年住むと会計上の価値は1円まで下がります(国交省ガイドラインの負担割合の考え方・2026年7月時点)。つまり6年以上住んだ部屋の壁紙張替えは、原則として借主の負担がほぼ残りません。

主な内装・設備の耐用年数の目安(国交省ガイドラインの考え方をもとに整理)

部位耐用年数の目安負担の傾向
壁紙(クロス)6年6年経過で残存1円・借主負担ほぼ0
クッションフロア6年同上
カーペット6年同上
畳表(おもて)消耗品扱い年数で一律に減価しない扱い
フローリング建物の耐用年数で判断部分補修は経過年数を考慮しないことがある

ここで誤解しやすいのが、「10年住めば何をしても負担ゼロ」ではないという点です。壁紙の”モノ”の価値は1円まで下がっても、故意・過失で汚した場合の「張り替える施工の手間(人件費)」は借主負担として残ることがあります。

たとえばタバコのヤニで壁一面を張り替える場合、クロス材料費の負担はほぼ0でも、施工費が請求されるケースがあります。年数だけで安心せず、過失の有無をあわせて見ることが大切です。

ケース別の退去費用|敷金なし・タバコ・ペットで変わる

退去費用は敷金なし物件は後払い一括請求の構造、タバコは通常損耗を超える借主負担の代表例、ペットは特約の有無で借主負担が分岐する。
図:敷金なし・タバコ・ペットは負担区分の原則に照らして請求の見え方と考え方が変わる(2026年7月時点)

先に結論です。退去費用は、敷金の有無・喫煙・ペットといった条件で、請求額の見え方と考え方が変わります。

よくある3つのケース

敷金なし物件の退去費用

敷金ゼロの物件は、退去時に精算する原資(預けたお金)がないため、費用の全額を退去時に請求されます。金額そのものが高いわけではなく、「後払いで一括請求される」構造が高く感じさせる要因です。

入居時に負担が軽い分、退去時にまとまった支払いが来る点を見込んでおくと安心です。敷金・礼金なし物件の入居時の注意点は、敷金・礼金なし物件の落とし穴で詳しく整理しています。

タバコ(喫煙)による退去費用

室内喫煙のヤニ汚れと臭いは、通常損耗の範囲を超える借主負担の代表例とされます。壁紙の全面張替えやクリーニング強化が必要になり、数万円〜十数万円上乗せされることがあります。

前章のとおり、壁紙の材料費は年数で下がっても、張替えの施工費は残り得るため、喫煙による負担は年数が経っても軽くなりにくい傾向です。

ペット飼育による退去費用

ペット可物件は、契約で「ペットによる損耗は借主負担」等の特約が付くことが一般的です。柱や壁のひっかき傷、臭い、床の汚れは借主負担と判断されやすくなります。

一方、ペット不可の物件で無断飼育していた場合は、契約違反として原状回復の範囲が広がるリスクがあります。

ハウスクリーニング特約は払う必要がある?特約の有効要件

先に結論です。ハウスクリーニング費用は原則貸主負担ですが、「特約」で借主負担と定めた場合は、一定の要件を満たせば有効になります。

国交省ガイドラインでは、退去時のハウスクリーニングは本来貸主が負担すべきものと整理されています。ただし、借主が負担する特約自体は、直ちに無効になるわけではありません。

クリーニング特約が有効と判断されやすい3要件

  • 特約の必要性がある:通常の原状回復を超える負担を課す合理的な理由がある
  • 借主が明確に認識している:金額や範囲を契約時に具体的に説明され、合意している
  • 金額が妥当:相場からかけ離れて高額でない(1K 2万〜3.5万円程度が目安・2026年7月時点)

逆に言えば、契約書の隅に小さく「クリーニング代◯万円」と書いてあるだけで、金額の説明も合意もなかった場合は、特約の有効性が争点になり得ます。

契約前であれば、クリーニング特約の有無と金額を必ず確認しておくのがトラブル回避の近道です。すでに契約済みの場合は、契約書の該当条項と実際の請求額を照らし合わせます。

退去費用が高すぎるときの確認手順と相談先

高すぎる退去費用への対処は、内訳明細を出してもらいガイドラインと照合し、入居時の記録と照らして交渉し、折り合わなければ消費者ホットライン188から消費生活センターに相談する順で進める。
図:退去費用が高すぎるときは内訳明細の確認→ガイドライン照合→交渉→公的相談の順で動く(2026年7月時点)

先に結論です。退去費用が高すぎると感じたら、「内訳明細の確認 → ガイドライン照合 → 交渉 → 公的相談窓口」の順で冷静に動きます。

敷金精算の現場で見てきた範囲でも、内訳を確認しないまま支払ってしまい後悔するケースが少なくありませんでした。まず金額の”中身”を見ることが第一歩です。

高すぎる請求への対処ステップ

  1. 原状回復費用の内訳明細を出してもらう:品目・数量・単価・施工費・経過年数の控除があるかを1行ずつ確認する
  2. ガイドラインと照合する:経年劣化・通常損耗が借主に付け替えられていないか、耐用年数の減価が反映されているかを見る
  3. 入居時の記録と照合する:入居時の写真やチェックシートで、元からあった傷を借主負担にされていないか確認する
  4. 貸主・管理会社に交渉する:ガイドラインの原則を根拠に、負担区分の見直しを書面で求める
  5. 公的な窓口に相談する:折り合わない場合は消費生活センターへ

相談先の入口は、消費者ホットライン「188(いやや)」です(消費者庁・2026年7月時点)。最寄りの消費生活センターにつながり、退去費用トラブルの相談ができます(参照:消費者庁 消費者ホットライン188)。

金額が大きく解決しない場合は、少額訴訟や法テラス(日本司法支援センター)の利用も選択肢です。法的な判断が必要な場面は、弁護士など有資格の専門家に相談してください。

退去が決まったら、費用と並行して引越しの準備も進みます。引越し費用を抑える段取りは、一人暮らしの引越し費用を安くする7ステップを参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q1:退去費用の相場はいくらくらいですか?

通常使用であれば、ワンルーム・1Kで2万〜3.5万円、1LDKで3万〜5万円が目安です(各社公表・2026年7月時点)。これはハウスクリーニング代と、経年劣化を除いた原状回復費用の合計イメージです。タバコやペット、大きな傷などの過失があると、この相場を超えて上乗せされます。

Q2:10年住んだら退去費用はかかりませんか?

壁紙などの負担はほぼゼロに近づきますが、費用が完全に0になるとは限りません。クロスは6年で会計上の価値が1円まで下がるため、経年劣化分の負担は残りません。ただしハウスクリーニング代や、故意・過失で汚した場合の施工費(人件費)は請求され得ます。

Q3:ハウスクリーニング代は借主が払うのが普通ですか?

原則は貸主負担ですが、契約に有効なクリーニング特約があれば借主負担になります。特約は「必要性・借主の明確な認識・金額の妥当性」の3点を満たすと有効と判断されやすくなります。契約書の隅に金額だけ書いてあり、説明も合意もなかった場合は、有効性が争点になり得ます。

Q4:敷金なし物件は退去費用が高いのですか?

金額自体が高いのではなく、退去時に一括で請求される構造が高く感じさせます。敷金がある物件は預けたお金から精算しますが、敷金なしは原資がないため全額を退去時に払います。入居時が軽い分、退去時にまとまった支払いを見込んでおくと安心です。

Q5:退去費用が高すぎるときはどこに相談すればいいですか?

まず原状回復費用の内訳明細を出してもらい、国交省ガイドラインと照合します。経年劣化が借主に付け替えられていないかを確認しましょう。交渉しても折り合わなければ、消費者ホットライン「188」から消費生活センターに相談できます(消費者庁・2026年7月時点)。法的判断が必要なら弁護士など有資格の専門家へ。

まとめ|相場だけで判断せず「過失・年数・内訳」で見る

この記事の要点
  • 退去費用の相場は1Kで2万〜3.5万円、1LDKで3万〜5万円が目安(通常使用・2026年7月時点)
  • 国交省ガイドラインでは経年劣化・通常損耗は貸主、故意・過失は借主が原則
  • 壁紙は6年で残存1円=居住年数が長いほど借主負担は下がる
  • 敷金なし・タバコ・ペットはケースごとに請求の見え方と考え方が変わる
  • 高すぎるときは内訳明細→ガイドライン照合→交渉→188の順で動く

退去費用は、相場の数字だけを見て「高い・安い」を判断するものではありません。差が出るのは、過失の有無・居住年数・請求内訳の3点です。

まずは内訳明細を確認し、経年劣化まで負担にされていないかをガイドラインと照らし合わせる。この一手間が、払いすぎを防ぐ最短ルートです。判断に迷う場面や法的な争いは、消費生活センターや有資格の専門家に相談してください。

免責事項

※本記事は一般的な情報を整理した参考情報であり、個別の退去費用・原状回復の負担判断や法的トラブルの解決を保証するものではありません。記載の相場・耐用年数・制度は2026年7月時点の公開情報を参考にしており、実際の負担は物件・契約内容・損耗の状況で異なります。契約や請求に関する法的な判断は、消費生活センター・弁護士等の有資格の専門家にご相談ください。

参考・出典

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この記事を書いた人

Haraです。不動産仲介の会社で4年間、お客さまの内見に付き添いながら、300件を超える物件をご案内してきました。初めての一人暮らしで契約を急いだ方が、入居してから「日当たりが思ったより悪い」「上の階の足音が響く」と気づく場面を、何度も横で見てきました。図面だけでは分からないことが、部屋にはたくさんあります。

私自身も18歳から数えて7回引越しをしていて、案内する側と借りる側の両方を経験しました。このサイトでは、内見でどこを確認すればいいか、初期費用のどこを削れるかといった、部屋探しで損をしないための準備を具体的に整理しています。

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